やさしい行動分析:困った行動を分けてみる

先日、日本自閉症スペクトラム学会の勉強会に参加しました。

こちらの学会が素晴らしいのは、医療・福祉・教育・心理・アセスメント・その他という複数の観点からの話がバランスよく聞けることです。

複数分野を自閉症スペクトラムという分野でつなぐことにより、その分野の課題研究をしている方同士が現状をわかちあうこととなり、自然と連携の流れが生まれてゆくことも尊いです。

今回の話のなかで、保護者の方も知っておくと役に立つだろうと思ったことがいくつかありました。そのうちの一つが、行動の理由に目を向けるということです。

困った行動が起きた場合に、その現象だけに目をむけがちですが、ひとつひとつの動作にも理由があるという話です。

例えば、子どもが物を叩いて壊してしまった場合、もちろんその行動は好ましくはないのですが、

もしかしたらその物にとても興味があったけれども上手く動かせなかったのかもしれない。

もしくは、その物が予期せぬ動きをして自分が痛い想いをしたのかもしれない。

更には、何か嫌なことが起きて感情を物にぶつけるしかなかったのかもしれない。

このように、その現象(動作)の前に目を向けてみることで、その子の行動がなぜ起きているのかを分析することができます。

観察は難しくもありますが、少しの間でも「観察する」という気持ちで関わっていると、どんな時にそれが起きやすいのか、それとも不定期に起きているのかがわかってきたりと、何かしらの気づきが得られます。

その上で、その行動を3種類に分けてみると、その先にどのように対応したらよいのかがわかります。

ひとつめは、コミュニケーション行動。つまり、その行動を起こすことによって、誰かの関心を引きたいとか、自分の中にある気持ちを表現して伝えたいということから起きている行動のこと。

この場合は、言葉にならないその想いを受けとめる人がいることを伝えた上で、行動表出の種類を変えていく対応となります。

ふたつめは、回避行動。何か嫌な音が聞こえたり、嫌な場面に遭遇した時にそのいやな感覚を封じ込めるために、何らかの行動を起こすというもの。

この場合は、回避したくなる刺激を調整します。刺激となっていることは、周りの人にとっては何でもない音であったり、家族の何気ない会話(内容よりもその声や雰囲気)だったりもするようです。

口論ではないし、子育ての方針などについて意見を交わし合うレベルであっても、見解を擦り合わせるには結構しっかりと話し合うことが必要だったりします。

過敏な子ども達は、そういうことすら「怖いことが起きている」とか「自分が何か悪いことしてしまったのではないか」と感じられるようです。感覚が先に立ったり、過去にそれを肯定するような場面を経験していると、決めつけのようになってしまうところもあるでしょう。

回避行動や防衛反応が起きていると感じたら、安心できる状況説明をしてあげることも、時には必要かと思います。

3つ目は、ある感覚を強化するための行動。その感覚に対するこだわりがあるがゆえに、脈絡なく起きるものです。

低覚醒で普段はぼんやりしているけれども、その行動をすることでスッキリするから、無意識にその行動をしてしまう、一度やったら何だか面白かったからやってみよう~ということもあるようです。

少し程度は違っても、癖のようなものでしょうか。

この場合は、その行動以外にもその子にとって好ましいと感じられる感覚が得られることを探してゆくこととなります。

凸凹がある場合、間隔の良し悪しとか強弱も、部位や感覚の種類によって違ったり、助けを求めるという行動につながりにくい場合もあるので、教えてあげることが必要な場合もあります。

自分の感覚からするとあり得ないと感じることを、「そういうこともあるのか」と納得するには時間も必要で、多くの保護者の方はそこで戸惑うのではないかと思います。

また、対応の引きだしを増やすことは限度もありますが、そういうところは、同じようなことで困っている親同士の会や、支援者さんに聞いてみて欲しいです。

支援者は、察しがついているところはあっても、生活の全てを見ていないので、実際の場面を明確に思い浮かべることができると、助言できる範囲も変わってきます。

以上、問題行動がその人にとってどのような役割を果たしているのか、その行動が、その人にとってどのような機能を持っているのか?を考えてみることの大切さについて書いてみました。

切り替えの難しさに対応するのは、なかなか難儀ではありますが、予告・耳だけで目からのインプット・回数の調整・刺激調整・クールダウンの場所や方法の増加など、出来ることはあります。

それを家庭だけで試行錯誤し続けるのは大変なので、是非具体的な手立てを多く持ちつつ、全体を掴もうとしてくださる伴走者さんを見つけて欲しいと思います。

療育センター・児童発達支援事業所・放課後デイサービス・通級・特別支援学級・教育センター・保健所や保健センター等は、手助けをくださる場合があります。(全員が、そのようなスキルを持っているとは限らず、担当者によって専門が違うので、諦めずに「わかる人」を探してほしいです)

福祉の機関は、身体の不自由な方や、知的な面でサポートが必要な方が利用するところだと思われているかもしれませんが、そんなことはなく、発達障害の方向けにも門戸を開いています。